賃貸経営の雑学

事務所ビルで保育所やデイサービス等を募集する時の注意点

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あなたがもし、事業用(特に事務所ビルなどの)不動産オーナーであるなら、或いは、事業用不動産の仲介業をしているなら、、、

テナント募集を考える際に消防法が及ぼす影響について知っておくべきポイントがいくつかあります。

特定防火対象物

事業用建物の用途が、新築当初は事務所や寄宿舎、倉庫、工場などであった場合は、非特定用途(不特定多数の人が出入りしない用途)といいます。

しかし、その建物の一部に不特定多数の人が出入りする特定用途をテナントとして受け入れる場合、特定用途の合計床面積(共用部分の案分面積も含む)が建物延床面積の10%以上もしくは300㎡以上になる場合は特定防火対象物という扱いになり、消防法上の規制がグンッと厳しくなります。(厳しさの度合いは建物の階数や面積によって異なる)

特定用途とは

1項イ:劇場、映画館、演芸場、野球場、体育館、競艇場
1項ロ:区民間、市民館、集会場
2項イ:キャバレー、バー、クラブ
2項ロ:ボーリング場、ダンス場
2項ハ:ファッションヘルス、イメクラ
2項二:カラオケボックス、マンガ喫茶
3項イ:料亭
3項ロ:レストラン、喫茶店、食堂
4項:百貨店、スーパーマーケット、コンビニなどの物販系
5項イ:旅館、ホテルなどの宿泊施設
6項イ:病院、診療所、助産所
6項ロ:老人ショートステイ、老人ホーム、乳児院、障碍児入所施設
6項ハ:保育所、老人デイサービス、障碍者支援施設
6項二:幼稚園、特別支援学校
9項イ:サウナ、ソープランド
16項イ:複合ビル(建物の中に複数の用途がある建物)に、上記の用途が含まれているもの

これらに類するものを特定用途といいます。ちなみに、整骨院や学習塾は特定用途ではありません。

上記の建物のように1階の事務所が喫茶店などの飲食店等や高齢者デイサービスなど、いわゆる特定用途に変更したことで、建物全体が特定用途の複合ビル(16項イ)になり自動火災報知設備建物全体に義務付けられてしまいます。(消防法施行令第21条第1項)

また、高齢者デイサービスなど福祉施設の場合、床面積が100㎡を超えるなら建築基準法上の用途変更手続きが必要となり、検査済証の無い建物の場合は特に難しくなってきます。

非常電源について

非常電源とは、火災によって停電しても電力を供給できる設備のことです。非常電源として使えるものは消防法で定められていて、

  1. 非常電源専用受電設備
  2. 自家発電設備
  3. 蓄電池設備
  4. 燃料電池設備

の4タイプがあります。

ちなみに、延床面積が1000㎡以上の特定用途建物の場合は、1の非常電源専用受電設備は認めてもらえません。

ここで注意しておきたい点は、延床面積1000㎡以上の建物がテナント入れ替えによって建物全体が非特定用途から特定用途になった場合、非常電源専用受電設備を使っている場合は、自家発電設備、蓄電池設備、燃料電池設備などに取り換える必要があるということです。

防火管理者

入居するテナントの用途と収容人数(定員数だけじゃなく、その業務に携わるスタッフの数もカウントする)によって防火管理者の選任義務が発生します。

この防火管理者ついても非特定用途か特定用途なのか、そして、床面積によって乙種・甲種がありますので注意が必要です。甲種は乙種の上位資格なので、資格取得するなら甲種まで取ってしまうのがおススメです。

用途変更による影響

ここでは、消防法上の用途変更、つまり、事務所や塾などの非特定用途から保育所やクリニックなどの特定用途にして建物が特定防火対象物となる場合、どのような影響が出てくるのかを見てみましょう。

ただし、建物階数や床面積などによっては、全てが影響する訳ではないので、詳細は物件所在地を管轄する消防署の予防課に確認しましょう。

予防課での相談は、昼から現場調査に出る職員が多いので、午前中に行くようにしましょう。基本的には電話では回答してくれません。

消防設備関係

  • 遡及(現行基準に適用させる)
  • 型式失効の検定品の交換(自動火災報知機の受信機、中継器、発信機、感知器など)
  • 新たな消防設備の追加(ダクト消火など→但し、緩和規定あり)
  • 放送設備、避難器具などの設置
  • 自動火災報知機のスヌーズ機能追加、階段内7.5mごと感知器や案内パネル設置
  • 自主設置→義務化(点検、報告の義務)
  • 自火報の感知器 熱→煙に交換(地階、無窓階、11階以上の階)
  • 非常電源 専用受電→自家発電等
  • スプリンクラー設備の全館設置
  • 既存特例により緩和されていた消防設備の新設

消防設備点検関係

  • 点検報告期間3年→1年ごと

防炎規制関係(カーテン、カーペット等)

  • 防炎規制の対象(新たに発生する特定用途部分)
  • みなし従属により、非特定用途に吸収されていた既存の特定用途部分も防炎規制の対象

防火管理関係

  • 全体の収容人数が30人以上で防火管理者が新たに必要
  • 全体の収容人数が300人以上の場合又は30人以上且つ特定1階段対象物に該当する場合は防火対象物点検が必要
  • 300人以上で甲種防火管理再講習が必要
  • 年2回の消防訓練の実施義務化
  • 統括防火管理者の選任が必要

立入検査関係

  • 通常検査を実施すること

届出・申請関係

  • 着工届、設置届など(用途変更に伴い、消防設備を新設又は改修する場合)
  • 防火対象物使用開始(変更)届出書

 

以上のように、消防法上の用途変更は結構大変だと感じるかも知れません。

しかし、マンションや事務所ビルなど非特定用途の建物の場合には、予め特定用途のテナントを誘致すると消防法上ではどうなるのか?ということを把握しておくことが、スムーズで且つ優良なテナント募集につながります。

特に、国の補助金を使った企業主導型保育所(契約期間10年以上)や障碍児向けの放課後デイサービスなど、長期安定経営を期待できる優良テナント様を獲得するチャンスを逃さない為にも、できるだけ事前に管轄の消防署で調べておきましょう。

 

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TEL:072-350-5725
(受付/9:00~21:00)

※電話が混み合って繋がりにくい時は、しばらく経ってからおかけ直し下さい。

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