相続対策塾

相続対策塾12 老朽化不動産のリスクとその解決方法

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souzokutaisaku

今回の学習テーマは「老朽化した不動産のオーナーが知っておくべきリスクとその解決方法」について。

文化住宅やアパートはリスク

相続税対策として、相続税の課税評価額を下げるために「現金や有価証券などを不動産に変えて保有すること」は基本的な対策の1つと言えます。例えば、保有している土地又は土地を購入して賃貸物件を建てて賃貸するというパターンがオーソドックな方法です。実際は、土地を購入してまで建てる人は、それなりの資産や収入があって「利回り」よりも「節税」を重視する人しかやりません。なので、多くの場合は既に所有している駐車場や農地の上にアパートや賃貸マンションを建てるか、既存の中古収益物件を購入して保有するパターンです。そんな事から基本的に「賃貸物件」は資産だと言えますし、そう思っている人も多いことでしょう。

昭和56年以前に建った物件の耐震性ってどうなの?

しかし、この節税対策の為に昭和56年以前に建てられた文化住宅や長屋、木造アパートなどの賃貸物件は「資産」というよりも個人的には「時限爆弾」だと感じています。しかも、その時限爆弾の構造は、木造に限らず軽量鉄骨造のプレハブ住宅も大和ハウスやセキスイハウスが昭和35年頃から盛んに作り始めたので、古い建物は相当数存在すると予測されます。

また、昭和56年以前に建てられた建物に対しての「耐震基準」は今よりもかなり緩く、更に現場の検査体制もキチンと実施されていたという証拠もない時代でした。つまり、ここでは賃貸用物件に限らず昭和56年以前に建てられた物件の耐震性は阪神大震災・熊本地震・東日本大震災クラスの揺れには通用せず、多くの建物が倒壊したことを再認識する必要があります。

人は、実際に自分自身に火の粉がかからないと行動できず、対岸の火として見てしまいがちなので注意が必要です。

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こちらの物件は、どこにでもよくある木造2階建ての文化住宅です。文化住宅の所有者さんから「今後どうすれば良いかが分からない」と相談を受けたので、すぐに物件調査に行ってきました。所有者さんは文化住宅を中古で購入されており、建築年は知らない(覚えてない)との事でしたので、登記簿も調べましたが築年数が不詳だった為、市役所に置いてある住宅地図を遡って調べたみたところ、完全に昭和56年以前に建てられた物件だと判断できました。

木造物件を襲う「シロアリ」

古い木造の文化住宅やアパートは、特に気をつけておくべき点があります。それは、日本では北海道の一部を除いて全国各地にシロアリが意外と多く生息しているという認識を持つことです。昔の建物は床をめくると地盤とご対面できる「布基礎」と呼ばれる基礎の作りが主流だった為、5年単位くらいで床下に防蟻処理をしておかないとシロアリに土台や柱を喰われてしまいます。

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こちらの文化住宅も1階部分の柱がシロアリに喰われていました。柱がシロアリに喰われて2階の荷重に耐えられずにモルタルの外壁が湾曲しているのが分かります。このままでは、阪神大震災クラスどころか少々の地震でも危険だと言えます。

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この画像部分の部屋には、賃借人が住んでおらず空き家とのことですが(住んでたら、入居者が黙ってないでしょうけど)、この部屋の並びや2階には数軒が入居中とのことでしたので、早急に対策をしないと、せっかくの資産が一夜にして負債へと変わる可能性があります。いつ発生してもおかしくないと近年言われ続けている「南海トラフ大地震」が発生すれば、結末は目に見えているからです。

耐震診断は、やらなきゃ損する?

多くの市町村で昭和56年以前の物件に対する耐震診断耐震設計耐震工事の補助金制度を実施しています。私が取り扱ってきた案件の経験から言えば、正直なところ耐震診断の補助金は先着順で行政の予算枠に間に合えば期待できます。大阪の場合だと耐震診断費用の9割又は戸あたり45,000円のいずれか低い方が補助金として貰えます。しかし、耐震設計と耐震工事の補助金については、「昔ながらの間取り」の文化住宅やアパート・長屋は、間取り関係上、求めるべき耐震基準まで耐震化できないことが多いので、「補助金」はほとんど期待できないでしょう。

よく、「何でできないの?」と聞かれますが、簡単に言うと「木造は、壁量(耐震性のある壁の数)で耐震性能が決まる為、玄関の横に台所がある間取りなら、台所の窓を潰して耐震壁にする必要があるけど、それは建築基準法の別の規制である「居室の採光」を無くすことになるので、認められない。つまり、壁にできない。じゃあ、玄関を潰して壁にする。そうすれば、出入りできない。つまり、結局はムリじゃん」っていう感じです。

ここで、耐震診断の話を切り出したのは、入居率が半分以下の場合に建替えや更地にして売却するとしたら、「賃借人に立ち退いてもらう正当事由」のひとつとして耐震診断調査報告書が使えるからです。家主として、賃借人が安心して暮らせるように物件を維持管理することは当然の義務ですから、耐震診断を実施しておいて、早い段階で今の賃借人に「耐震性が無いから何とかしたいけど、やりようも無くて危険だから早めに引越しされた方がいい」旨を伝えておいた方が良いかと思います。

もし、ここで引越し代の話になったとしても、将来のリスクを考えた場合、10万~20万程度くらいなら協力してあげても安いものだと言えます。

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