相続財産より借金が多い時は、相続放棄すればいい?
確かに、一般的には誰が考えても遺産より借金を残された場合、相続放棄を考えるもの。しかし、これがあまり儲かっていない中小企業の経営者となれば話は違ってくるので注意が必要だ。
あなたは大丈夫だろうか?
では、さっそく事例を見てみよう。
鉄工所を経営する田中さん(仮称)の事例
田中さんは、大阪で小規模よりやや大きい鉄工所を両親との3人で運営してきた。しかし、当時、社長だった父親が他界すると、相続で破産の危機に陥った。
田中さんの鉄工所は、父親が一代で築き上げ、バブルの頃には売上も年商数億円までになっていた。堅実な父親は、個人資産として鉄工所に隣接する土地を購入したり、賃貸マンションも保有し、それなりに裕福な生活を送っていた。
ところが、リーマンショックの直後、得意先が単価の安いアジアへ仕事を回したり、受注そのものが激減してしまい父親は、鉄工所に隣接する土地と賃貸マンションを約3億円で売却し、経営資金として投入した。そして、田中さんの父親が他界し、法人登記を変更する時になって父親の店主貸しが時限爆弾であった事を知ることになる。
決算書を見ると父親が鉄工所に投入して(貸付けて)いた約3億円は、鉄工所から父親へ返済されておらず、田中さんと母親が継ぐ負の遺産となり、当然ながら相続税がかかる事になった。(貸付金は本来、返ってくるべき資産なので、手元に実在しなくても課税の対象となる)
しかし、売上が激減した鉄工所では、役員とは名ばかりで、役員報酬も少ない田中さん達には、相続税を支払う現金が無かった。
一方、鉄工所への貸付金を放棄すれば、別の問題が発生する
鉄工所への貸付金を放棄すると、それは鉄工所の決算書に債務免除益として計上され、今度は法人税を支払う必要が出てきてしまう。
約3億円もの債務免除益を発生させて法人税を支払えば資金ショートへのVIP招待券を手に入れるようなもの。
田中さんは結局、法人税よりも税率の安い相続税を支払う為に自宅を担保に、分割納付の道を選んだ。
これはまさに、相続はしたくないが、放棄もできないという多くの中小企業にあり得る話である。
決算書に多額の店主貸しが計上されている場合は、いざという時までに法人から引き上げておこう。
個人が現金、預金、有価証券など確認できるもので保有せずに使ってしまった(実在しない)という事であれば、課税対象にはならない。
【教訓・対策】 店主貸しの金額が多ければ、相続するまでに対策が必要である。
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