さて、今回は任意売却業者Hさんとある物件の物上げで鉢合わせになった時の事をお話しします。
Hさん 「先月、差押情報リストに載ってたある中小の印刷会社の社長から
相談を受けましてねー。(←ちょっと自慢げに)
その社長のところは、約500坪の土地のうえに印刷工場兼事務所
(土地建物は会社名義)を持ってるんやけど、
経営が苦しくて差押喰らって、
不動産に差押入ったから、融資してもらえんようになって・・・、
社員30人おるらしくて、
資金繰りが急に悪化して破産を考えてたんやて。
そこで、ウチが先に任売で金残したるから、
それから破産したらーって・・・」
私 「そこの負債っていくらですの?」
Hさん 「ザックリと1億円ぐらい」
私 「物件はどんな感じですか?」
Hさん 「時価で5億は付くやろね。たぶん・・・」
私 「えっ!? それやったら、満額弁済できますやん。
別に破産せんでも・・・。」
(しかも、物件が債務超過してないから、任売と言うのも変やし)
Hさんは、あまりよく分かっていない人だなと思ったら、任意売却を始めて、まだ半年との事でした。
中小企業が経営難で不動産を処分しようとしているケースの場合、経営者がどうしたいのか?によって変わってきますが、多くの経営者は、どうせ会社を潰すなら、自分の手元に出来るだけ多くの現金を残して、終わらせたいと思うはず。
今回のケースで言えば、不動産を直接売却するよりも、会社(正確には株式)を売却する
M&A(正確にはMergers and Acquisitions)がお勧めです。
このM&Aは、不動産の売買に比べて売主は、より多くの手取りが残り、それを理由に買主は相場よりも安く買い叩け、さらに不動産取引業ではないので、コンサル手数料の規制がなく、まさにwin・win・winとなります。
M&Aの利点はズバリ、『税制』です。
大まかに説明すると、例えば5億円で不動産を売却した時は、
売却代金5億円-法人税2億円(売却代金の40%)-所得税1.5億円(税率50%)
=手取り1.5億円
これが5億円でM&A(株式を売却)した時は、
売却代金-所得税1億円(税率20%)=手取り4億円
手取りが1.5億円と手取り4億円なら非常に多くの人が4億円を選ぶハズ。
買主が相場よりも買い叩ける理由は、
上記の例でいくと、
不動産を5億円(相場だと仮定)で売って手取り1.5億円のところを
株式売却3億円で話をまとめてあげれば、
3億円-6千万円(税率20%)=手取り2.4億円!
不動産相場から2億円買い叩いても、売主は
相場の5億円で不動産を売却したときの手取り1.5億円よりも
得なので、納得します。
でも、これ(M&A)は不動産を『売却』という視点だけで見ていると気づかない人が非常に多いのが現実です。
ちなみにM&Aにもデメリットがあり、それは
隠れた瑕疵ならぬ『隠れた債務』が無いことを徹底調査する必要があります。
例えば、帳簿にない借入が無いかとか、商品提供・サービス業なら、
今後において損害賠償訴訟をされる可能性はないかなどがあります。
ま、今はこんな調査(デューデリジェンス)を専門にしている会社もたくさんあるので、私達、不動産業者が直接動くことはあまりありませんが・・・。皆さんもご存知のとおり、日本の会社の9割以上は中小企業です。
私ども不動産業者が手掛けるM&Aは、株主の少ない非上場の中小企業が一番やりやすいです。
あと、その多くのワンマン会社は相続対策の為に、不動産を個人名義ではなく会社名義で所有していることが非常に多いので、差押情報リストをもとにアプローチかけると意外と興味を示してくれたりしますよ。
その時は必ず、その辺の不動産屋とは、一味違うことをアピールしておきましょう。すぐにレスポンスが無くても遅かれ早かれ必ず電話は鳴りますから。幸運を祈ります!!
ぜひ、一度お試しあれ。
※この記事は、2012.11.21に執筆したものを旧サイトから移植・一部修正等したものです。