さて、買主が見つかれば、いよいよ不動産売買契約を締結することになりますが、通常の不動産売却と違って任意売却では、契約前にクリアしないといけない最大の山場があります。それは・・・
配分案について債権者の同意を得ること
「配分案」とは、売却代金を各債権者ごとに、いくらずつ割り振るのかという内訳のことです。
ここまで、読んできたあなたはきっと「債権者が納得した売り出し価格なのに、何でまた同意が必要なの?」と思うかも知れませんね。確かに売り出し価格には納得してもらってから買主を見つけた訳ですが、買主が売り出し価格に値交渉をしてくることが多々ありますし、債権者としては実際にいくら回収できるのかという数字を確定させたうえで、更に買主として欠格事由のある人(あなたの利害関係者や暴力団関係者など)で無いかなどを審査する必要があるからです。
1・任意売却業者が売却代金の配分案を作成
売却代金は、物件に2つ以上の抵当権や差押が付いている場合、1番目の債権者が先に債権額を回収することができ、その回収後に余った分から後順位の債権者が債権を回収するという配分になります。
しかし、それでは後順位の債権者達の取り分までは残らないことが多いのです。でも、その後順位の債権者からも抵当権や差押を外してもらう同意を取らなくては成りません。残された債権者からすれば、1円も回収できないのに、なんで協力しないといけないのかとなります。
では、何かやりようがあるのか?
実は、やりようと言うよりも話の持って行き方があります。もし、後順位の債権者達が差押解除に同意をしなかった事で、任意売却ができずに競売で処理されてしまうと、ほとんどの場合、結局は、後順位の債権者達も回収できないことになります。
ですので、「決済時に抵当権・差押を外して任意売却に協力してくれるなら、売却代金から少し配分しますよ」と言って渡すのがいわゆる「ハンコ代」と呼ばれるものです。このように書くと簡単に納得してくれそうですが、実務では差押解除の合意がないと売買契約が成立しないので、足元を見てくる後順位の債権者も少なからず実在します。
いずれにしても、任意売却業者にとっては、後順位の債権者の数だけ交渉・調整していく必要がありますので、買主を探すことよりもこの配分案をまとめる事が最大の山場となります。この配分交渉がうまくできなければ、結局、競売で処理さてしまいますので、これが、以前にお話ししていた「知り合いの不動産屋だから・・・」という事だけで任せると、競売まで二人三脚をしてくれるパートナーを選んだことになるかも知れないという理由です。
ちなみに、売却した代金がどんなふうに配分されるのかは、所有者(債務者)としても気になるところですね。ここでは、任意売却に協力的な住宅金融支援機構(以下、機構といいます)での配分例を見てみましょう。
機構は、機構以外にどれだけ割り振っていいのかは、次のように決めています。(情勢によっては条件が変わるかも知れません)
・二番抵当権者へは、30万円もしくは残債額の1割のいずれか低い方
・仲介手数料としては、宅建業法に定められた金額
・登記費用としては、原則、1筆あたり1万円
・税金の分としては、10万円(差押登記がある場合のみ)
・管理費分としては、決済日の前日までの分(但し、過去5年分以内)
・引越し代としては、原則不可。ただし、やむをえない状況なら相談可
という感じで、他の債権者への配分をしたあとの残りは、すべて機構が回収します。
2・配分案に全員の債権者が同意したら契約の段取り
債権者へ「これで、抹消同意をお願いします」と配分案を提出してから返事が出るまで2~3週間はかかります。そして、全ての債権者の同意が取れてから、買主との売買契約について段取りをすることになります。
売買契約においては、通常の不動産売買と同じですので、売主であるあなたは、署名押印するだけで済みますが、契約時に買主が支払う契約手付金については、債務者であるあなたが決済前に使ってしまわないように、決済日まで任意売却業者が預かって決済日にはあたなの目の前を素通りして債権者の手に渡る事になります。
また、売買契約の時に、買主と顔を合わせたくないという事であれば「持ち回り」と言って、売主買主がそれぞれ別の日に署名押印してもかまいません。
次は、最終章となる「引越し・再スタート 残債はどうなるの?」でお会いしましょう。
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