不動産の雑学

事業用定期借地権とは

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今回は、コンビニなどの店舗事業者がロードサイドにある土地を借りて建物を建築し、運営する場合によく利用される事業用定期借地権について簡単おまとめ。

借地権は2種類ある

事業用借地権の話の前に、借地権というのは次の2つのものに分けられることを知っておきましょう。

地上権(物権)

当該土地の隣人など第三者に対しても権利を主張でき、その権利は地主の承諾なしに譲渡も自由にできる。
地主にとっては不利な点が多く、地上権はあまり利用されていない。

賃借権(債権)

当事者間のみ権利を主張できるもので、第三者へ権利を譲渡するには地主の承諾が必要。一般的には、こちらの借地権が利用されている。テナント(借主)が建物登記すると、その登記が土地賃借権の対抗要件(借りていることを主張できる)になる。

建物は借主が建てる

事業用定期借地権は、借主(テナント)が建設協力金として地主に建築資金の一部を貸し付け、地主が建てた建物を借りる建て貸し方式(建物賃貸借)とは異なり、テナントが実費で借地上に建物を建てることになる。

事業用定期借地に限らず、借地権はそもそも建物を所有する目的で利用されるもので、特に建物登記は必須条件ではない。しかし、現実では建物の所有を明確にするために登記するのが一般的。稀に市街化調整地域内などで建築確認を取らずに違法で建てた建物が未登記の状態というのもある。

借地期間は10年以上50年以下

もともと事業用定期借地権の期間は10年以上20年以下でしたが、20年後にはテナントが建物を解体し更地状態で地主へ返還する必要があり、使い勝手の悪さから平成19年12月21日に法改正され、10年以上50年未満で自由に設定できることになった。契約は公正証書で行う必要があり、公正証書以外で契約すると普通借地権になるので気を付けよう。

ちなみに、借地期間10年~30年以下は、契約の更新無しが当たり前だが、30年~50年以下の場合は、契約を更新しない特約を明記する必要があるので要注意。

また、期間満了となっても、契約当初から50年以内の範囲であれば延長することができ、契約延長は公正証書によらずに合意書でも可能だ。

<借地期間10年~30年>
コンビニ、らーめん店、歯科医院など

<借地期間30年~50年>
パチンコ屋、ショッピングセンターなど

メリット・デメリット

では、事業用定期借地権を使う場合、地主とテナントはそれぞれどのようなメリット・デメリットがあるのだろうか?

地主のメリット

  • 相続時に物納できる
  • 登記すれば第三者へ対抗できる
  • 建設費不要でローリスク

地主のデメリット

  • 期間中は解約できない
  • 売却しにくい
  • 賃料増額請求権排除の条項があると不利
  • 賃借権譲渡可の条項があると、将来は脆弱企業に譲渡される可能性もある(フランチャイズ化など)

テナントのメリット

  • 出店しやすい
  • 土地購入代金は不要
  • 売買に比べて仲介手数料が安い
  • 撤退時、更地化する費用のみ
  • 登記すれば事業資金融資の担保に

テナントのデメリット

  • 建物償却期間よりも借地期間が短いと減価償却しきれない
  • 建物買取請求ができない
  • 事業が好調でも契約更新なし(地主との合意があれば延長可能)
  • 居住スペースは作れない(キッチン・トイレのある管理人室など)

権利金は必要なの?

権利金とは本来、借主が土地を買わずに非常に安い地代で土地を利用する場合、借主に相応の利益が発生するので、それを形にして地主に収めるもの。

ところが、事業用定期借地の場合は相当地代といって、安くはない地代(一般的には年額で更地価格の5~6%程度)を払うので基本、権利金のやりとりはない。

ちなみに更地価格は、誰もが見れる路線価を基準に計算することが多い。

保証金の相場は?

保証金の相場は、立地など地域性によって大きく変わるが、基本的には建物解体費相当額や地代の1年分というより、地代の6ヶ月分以下など少額な方が地主、テナント双方にメリットがある。

地主にとって、保証金の返還時は相続人が引き継いでいるケースも多く、高額だと相続人が大変な思いをする可能性があるため。

テナントにとって、保証金として多くのお金をプールされるよりは、その分を運転資金に回せた方が圧倒的に有利。

建設工事中の地代

事業用定期借地権の契約開始は建物完成時或いは店舗オープンに合わせることが多い。ところがコンビニのように約1ヶ月半程度で建てれるもの以外で、建築期間が数か月に及ぶ場合、地主としては建設工事期間中の地代も払ってほしいというのが本音であり、事実、工事中は土地を使用するので地代を払う必要がある。

但し、一般的には確認申請をする当初1ヶ月はフリーレント、工事中は契約地代の半分など地主に協力を求めることが多い。

公正証書等の費用

事業用定期借地は公正証書で借地契約を締結する必要がある。主に

  • 司法書士の手数料
  • 登録免許税(不動産価格の10/1000)
  • 公正証書作成費 5~10万円程度(地代により変動)

ちなみに、公正証書は公証役場に地主とテナントが必要書類等をもって出向き、手続きを行うのですが、不動産業者が代理人として行くケースもある。

zenandaku

ただし、1人の不動産業者が地主とテナントの代理人になる「双方代理」は禁止されていることや、代理人になる為の役場基準の委任状づくりが面倒なので、当事者に同行してもらうのがベスト。

借地契約の手順

まず、覚書&契約書案を作成し、先にメールかFAXで公証役場へ送り、公証人の確認を受ける。
次に当事者間で覚書を交わし、公証役場に当事者が集まって事業用借地権設定契約を締結する。

登記は、約1~2週間で出来上がる。

以上、事業用定期借地権についての簡単解説でした。
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