不動産の雑学

破産管財物件の売却

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今回は、不動産業者として破産管財物件を任意売却する場合に知っておいた方がいい事柄について、私の体験をもとに解説します。『破産管財物件の売却』についてですが、破産した者が法人であったり、ある一定の財産(不動産や車、債権、株式、その他の財産)などを所有している場合には、破産手続きを依頼した弁護士とは別に、裁判所からの命令で『破産管財人』(弁護士)が任命され、破産管財人は破産者の財産を換価処分し、各債権者へ配分・調整することとなります。

不動産業者としては、任意売却でお手伝いをしたくても破産管財人がついた不動産は、どのように扱われ、どう処分していくのか、そして、財団ルールとは!?などなど、ある程度の流れ・内容を分かっていないと管財人(弁護士)に営業もかけれないし、初めて管財人を務める弁護士もかなり多いので、そんな弁護士を導いてあげる事ができません。

ここではザックリとお話します。

破産した人が所有していた財産には様々なものがありますが,それぞれの財産に適した方法により、より早く,より高く売却できるかが破産管財人の腕の見せ所になります。

破産管財人は,売却以外にも破産者が持っていた売掛債権,貸付債権などの債権の回収も行います。

破産者が不動産を所有している事も多く,そのほとんどは銀行などにより抵当権等が設定されていますが、破産手続が開始(昔は破産宣告といい、今は破産開始決定という)すると,このように担保権が設定された物件について売却が行われます。

通常、担保権の実行方法は民事執行法により、『競売』になりますが、

実務ではまず任意売却が試みられる

(この時,管財物件の売主は『破産管財人』となり、所有者が売主ではないのでご注意を。破産手続開始後、管財人が付いていれば一切の財産処分権は管財人に移るからです。)

買主が見つかると,管財人は各債権者の意向を配分案に反映させて、裁判所による売却許可を取ってから買主との間で売買契約を結び,売買代金が管財人に支払われる。

でも,抵当権などが設定されているから,売買代金のほとんどは抵当権者に弁済されることになります。

実際、買主から支払われた売買代金は、売主である管財人ではなく、(形上は一旦支払われたという事になりますが)目の前を通過して、取引の際に同席している抵当権者(各債権者)に支払われます。

ちなみに、抵当権や根抵当権は破産法上『別除権』とされており、抵当権者は、管財人による配分案が気に入らなければ、抵当権を実行して、『競売』に持ち込むことができるので、破産手続によらずに回収することもできると覚えておきましょう。

いくらで売るかの決定権は破産管財人ではなく,抵当権者にある

これは、売却代金のほとんどが担保権者に弁済されるからです。

あと、買主から支払われた売買代金のうち,ほとんどが抵当権者に弁済されると書きましたが,一部は売主である破産管財人へ支払われます。

これは,そのまま破産管財人の報酬になるのではなく,破産財団に組み入れられます。(これを財団ルール、財団組入れ金といいます)そして、破産手続が終盤に近づき,破産財団にある程度のお金が集まると,破産管財人はそのお金を各債権者に配当します。

つまり,管財物件を任意売却した場合には,その売却代金の一部が破産財団に組み入れられ,他の一般債権者への配当に充当されることになります。(もちろん破産管財人の報酬にも)

ちなみに、競売の場合は,競落の際に支払われた代金は抵当権者に全額支払われて、破産管財人や一般債権者には全く支払われない。(抵当権者に配当してもまだ金銭が残る場合を除く)

にもかかわらず,任意売却の場合には,抵当権者は破産財団へ支払う。(組み入れるといいます)

これは何故かというと,一般に任意売却の方が競売よりも高額で売却でき、又管財人は,売主となっていろいろな手続をするから,それに対する対価の意味もあります。

一般に管財物件を売却する場合の破産財団への組み入れ金額は,

大阪地裁の場合で、売却代金の5%~10%です。

1000万円の売買であれば,そのうち50万円~100万円が破産財団へ組み入れられ,残りの950万円~900万円が抵当権者に弁済される事になります。(実際にはこの他に登記費用や税金等もある一定額まで控除されますが)

破産者が所有していた物件のうち,かなりの数の物件がこのような任意売却により処分されていますが、管財人も忙しく、実際の売却業務は私ども不動産業者が代行することになります。

で、経験の浅い破産管財人が直接、物件をさばこうとしたり、任意売却に慣れていない不動産業者が預かると、抵当権者との抹消額に折り合いが付かず、破産管財人は財団放棄して、抵当権者は競売へと持ち込むのです。

財団放棄された物件を再度、任意売却へ結びつける方法などは、またの機会にお話します。

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※この記事は、2012.8.14に執筆したものを旧サイトから移植・一部修正等したものです。

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